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我が家の四猫物語

 我が家の四猫物語(11)


 アーペッペンのウン振り撒き事件が起きたのは6月の半ば、私たち夫婦の1回目の新型コロナワクチン接種の前日だった。明日は接種だから今日は水をたくさん飲んでゆっくりしようなどと言っていた矢先のことだ。七年間まったく粗相をせず清潔好きのアーペッペンなので、私たちも呆然とし、最初のうちは何が起きたのかよく分からなかった。部屋から部屋へ猛烈な勢いで疾駆し、その後にはウンが振り撒かれていたのだ。すごい勢いで走るのでおもしろがってわーちゃんも一緒になって走って行く。しかし、若いわーちゃんですら追いつけないほどのものすごいスピードで走り回るのだ。床はもちろん、床からダイニングの椅子へ、そしてテーブルへ、さらには食器棚の上へと猛ダッシュで駆け上がり、駆け下りていく。最初は、これは突発的な出来事なのだろうと思った。トイレを邪魔されたかして逃げたのだろうと。

 ところが翌日、いよいよワクチン接種だという日の朝も同じことが起きた。猛スピードで走り回るのでどこでウンを振り撒いているのかよくわからずその度に走った軌跡をたどってはウンを片付けるのだった。ワクチンを打った頃にはこの出来事で呆然とし、ワクチンの副反応なのかウン振り撒き事件の副反応か分からないほど疲労困憊していた。

 しかし、しばらくはただただ困惑するだけだった。アーペッペンがトイレに入るときはなるべく追いかけるわーちゃんを近づけないようにすることくらいしか思いつかなかった。オシッコは漏らさずちゃんとトイレでする(した後は逃げるように飛びでるのだが)というのも不思議だった。とにかくアーペッペンを落ち着かせようということで私の寝室のドアに開けてある猫扉も塞いで、なるべく一人にしてあげて様子をみようということにした。それでも二日にいっぺんくらいのペースでウンを振り撒きつづけた。当然、私の寝室のベッドの上にも振り撒くことがあるから、次亜塩素酸を片手に掃除し、その度にシーツやふとんカバーを除菌効果のある洗剤と酸素系漂白剤をたっぷり入れて洗うはめになった。

 いつも戦々恐々として、ウンの後始末に追われる日々だった。大袈裟に聞こえるかもしれないが実感としてはそうだった。ギター製作も中断し、パソコンに向かっての仕事どころではなかった。

 これは堪らないということで、一週間くらいしてからだったか、かかりつけのW動物病院でいろいろ検査し、行動診療のOZ先生を紹介してもらうことにしたのだ。

 問診票とともに前回引用した手紙をあらかじめOZ先生に送り、いよいよ遠隔診療、zoomによる診療ということになった。Zoomはいろいろな会議では使っていたが、診察で使うのは初めてだった。しかし猫の様子も写せるし、家の間取りやトイレの位置なども歩きながら撮影できて便利だなと思った。手紙にも書いたように、私たちも、それからW動物病院の先生たちもストレスによる問題行動だと思っていた。しかし、zoomでの説明を一通り聞くや否や、OZ先生は即座に「排便をした後はお尻を舐めますか? ──はい。 ──では、それは疼痛によるものですね」と言う。ストレスもあるでしょうけれど、根本問題は恐らくお尻あたりの疼痛によるものでしょう、腫瘍とかがないのであれば恐らく便秘によるものでしょう、とおっしゃる。動物病院で検便も触診検査も、レントゲンも撮って問題なしと言われていただけにあまりに意外な診断でにわかには信じられない気持ちだった。

 とりあえず一週間分の鎮痛剤とお腹の薬を出します、ということで、軟便のウンを振り撒かれてはたまらないということで、当面はケージに入れて様子を見ましょうということになった。我が家に来た当初はケージ生活をしていたアーペッペンだったが、ここに来てまたケージ生活を始めることになったのだ。

 新しいケージ(トイレ付き、小ぶりの三階建て)が届き、ケージを組み立てる私を遠巻きにしてYvesもわーちゃんも心配そうな、困惑した様子をしていて不憫だった。

(つづく)


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